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抱えすぎない余白

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12月23日 メンタルウェルネス 一日一話  人は知らぬ間に、いろいろなものを抱え込んでおるものでございます。やるべきこと、考えねばならぬこと、誰かの期待。ひとつひとつは小さくとも、重なってまいりますと、心はいつの間にかいっぱいになってしまうのであります。  すべてを今日のうちに片づけなくてもよろしい。すべてを自分ひとりで背負わなくてもよい。そう思えた瞬間に、肩の力がすっと抜けることがございます。  机の上を少し整え、明日に回すものをそっと横に置いてみる。「今はここまで」と区切りをつける——ただそれだけで、心に静かな余白が生まれてまいります。  余白というものは、決して怠けではございません。次へ進むために必要な、大切な“間(ま)”なのであります。詰め込みすぎぬことで、呼吸は戻り、思いもまた、ゆっくりと整ってまいります。  冬は、無理に前へ進まなくてもよい季節でございます。抱えていたものをいったん下ろし、空いた手で温かいものを受け取る。その余白が、また明日を静かに支えてくれるのでありますな。 23 December Mental Wellness One Thought a Day — Leaving Space Instead of Carrying Everything —  Without noticing, we often carry far too much. Things to be done, matters to think through, expectations placed upon us— each may be small on its own, yet together they quietly fill the heart to its limit.  There is no need to settle everything today. Nor is there any need to carry it all alone. The moment we allow ourselves to think this way, the tension in our shoulders begins to ease.  Straighten the desk just a little, and place a...

一日をほどくため息(2025年12月22日)

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12月22日 メンタルウェルネス 一日一話  一日を終えようとする頃、理由もなく深いため息がこぼれることがございます。何かがうまくいかなかったわけでも、特別に疲れ切っているわけでもない。それでも、胸の奥にたまっていたものが、そっと外へ出たがっているのでありましょう。  ため息というものは、とかく良くないものと受け取られがちであります。しかし実のところ、それは心が自分を守ろうとする、ごく自然な動きなのかもしれません。知らず知らずに抱えていた緊張を、静かに手放す合図——そう考えてみますと、ため息もまた大切な働きをしているのであります。  外套を脱ぎ、照明を少し落とし、深く息を吐いてみる。それだけで、身体と心の境目がゆるみ、今日の出来事が少し遠のいていくのを感じることがございます。  今日、どれほど頑張ったかを振り返らなくてもよろしい。評価を下さずともよい。ただ、「ここまで来た」と認めてやる。それだけで十分なのであります。  冬の夜は長うございます。だからこそ、一日をほどく時間を持ちたいものであります。ため息ひとつ分、心に余白をつくることで、明日へ向かう静かな力が、また戻ってくるのでありますな。 22 December Mental Wellness One Thought a Day — A Sigh That Unravels the Day —  As the day draws to a close, a deep sigh may escape us without any clear reason. Nothing has gone particularly wrong, nor are we utterly exhausted. Yet something gathered within the chest quietly wishes to be released.  Sighing is often seen as something negative. But perhaps it is, in truth, a natural movement by which the heart protects itself— a gentle signal that unspoken tension is ready to be let go...

静けさが整える心(2025年12月21日)

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12月21日 メンタルウェルネス 一日一話  寒さが続いてまいりますと、音の少ない時間が自然と増えてまいります。外を行き交う足音も、街のざわめきも、どこか遠くに感じられる夜。そうした静けさの中に身を置いておりますと、心が少しずつ整っていくのを覚えるものでございます。  日々、「何かをせねばならぬ」「考えをまとめねばならぬ」と、つい頭を動かし続けてしまいがちであります。しかし、あえて何も足さぬ時間をつくってみますと、心というものは自然と落ち着き始めるのであります。時計の針の音や、暖房のかすかな風の音さえ、安心の合図として胸に届いてまいります。  静かな時間は、決して空白ではございません。それは、心が本来の速さを取り戻すための余白であります。誰にも急かされることなく、自分の呼吸だけに耳を澄ませる、尊いひとときなのでございます。  冬は、外へ向かう力が弱まる季節であります。だからこそ、内側を整えるには、まことにちょうどよい。静けさに包まれながら、「今のままで大丈夫である」と、自分にそっと伝えてやりたいものであります。  何も起こらぬ時間が、今日という一日を、やさしく締めくくってくれるのでありますな。 21 December Mental Wellness One Thought a Day — How Quiet Brings the Heart into Order —  As the cold persists, moments of silence naturally increase. Footsteps outside and the noise of the town feel distant at night, and when we rest within such quiet, we sense the heart gradually finding its order.  In daily life, we often feel compelled to do something, to keep thinking, to organise our thoughts. Yet when we intentionally add nothing at all, the heart begins to settle on its own....

湯気のやすらぎ(2025年12月20日)

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12月20日 メンタルウェルネス 一日一話  寒さがいよいよ深まってまいりますと、湯気を見るだけでほっといたします瞬間がございます。コップに注いだ温かい飲み物から立ちのぼる湯気は、まるで心までもゆるめてくれる合図のようでございます。  忙しい日ほど、どうしても手を止める時間が少なくなるものであります。しかしながら、温かなカップを両手でそっと包んでみますと、不思議と呼吸がゆっくりと元に戻ってまいります。手のひらに伝わるその熱は、身体ばかりでなく、張りつめておりました気持ちにもじんわり広がっていくのであります。  湯気が立ちのぼる様子を静かに眺めておりますと、自分が日々どれほど頑張っておるかに、ふと気づくものであります。「少し休んでよろしいよ」と、誰よりも先に自分自身が自分へ伝えてやる時間でございます。  冬は気持ちが冷え込みやすい季節ではありますが、小さな温かさがあれば十分なのであります。一杯の飲み物が、心の奥の芯をそっと温めてくれるのでございます。  今日もまた、湯気の向こうにある静かなやすらぎを、ほんのひととき味わいたいものでありますな。 20 December Mental Wellness One Thought a Day — The Comfort of Rising Steam —  As winter deepens, there are moments when simply seeing steam brings relief. Steam rising from a warm drink feels almost like a signal inviting the heart to soften.  On busy days, the time to pause tends to disappear. Yet when we cradle a warm cup in both hands, the breath naturally slows once more. The heat that enters through the palms spreads not only through the body, but gently into the places where the mind has grown tense. ...

冬の深呼吸(2025年12月19日)

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12月19日 メンタルウェルネス 一日一話  冬になりますと、外へ出たその瞬間の空気は、きりりと冷たく身にこたえるものでございます。その冷たさに思わず身を縮めたくなることもありますが、ふと立ち止まり深呼吸をしてみますと、意外なほど心が澄んでくるのであります。  吸い込んだ空気が胸の奥へゆっくり満ちていき、吐き出す息が白くほどけて空へ消えていく。その軌跡を眺めておりますと、今日一日の緊張や焦りまでも、ふわりと溶けていくように感じられるのであります。  深呼吸というものは、ほんの数秒の行いでございますが、自分の中心をそっと整えてくれる、「いま、ここに戻る」ための小さなスイッチであります。忙しい日であっても、移動の途中でも、誰にも気づかれずに心を整えられるのが、ありがたいところでございます。  寒い季節は、気持ちが硬くなりやすいものであります。だからこそ、深呼吸をひとつ、自分へのあたたかい贈り物として味わいたい。冷たい空気が、かえって心の曇りをクリアにしてくれる瞬間があるのであります。  今日もまた、白い息とともに余計な荷物を手放し、軽やかな自分に戻ってまいりたいものでありますな。 19 December Mental Wellness One Thought a Day — A Winter Breath —  In winter, the air that greets us the moment we step outside is sharp and cold. Though the chill may make us want to shrink back, pausing for a deep breath can clear the heart in a surprisingly gentle way.  The air fills the chest slowly, and the breath we release unravels in a white trail that drifts into the sky. Watching it fade, we may feel the tension and hurry of the day dissolve along with it.  A deep breath, tho...

手をあたためる時間(2025年12月18日)

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12月18日 メンタルウェルネス 一日一話  冬になりますと、外での用事を済ませて帰ってきたその瞬間、手の冷たさに思わず驚くことがございます。指先が冷えておりますと、心までぎゅっと縮こまるような気がいたします。これは、私たちの身体が思っている以上に“あたたかさ”と心地よさを求めている証でありましょう。  そうした折には、ストーブや電気ケトルの湯気のそばで、ゆっくり両手をあたためてみたいものであります。あるいは、温かい飲み物を入れたマグカップを包み込むように持つだけでも結構でございます。じんわり広がる熱が、指先から腕へ、そして胸の奥へとしみこんでまいります。  あたたかさというものは、単なる“温度”ではございません。「ここにいてよいのですよ」という、身体から心へ向けた静かなメッセージなのであります。冷たさで固くなっていた気持ちがふっとゆるみ、今日の自分にそっと寄り添う余裕が戻ってくるのであります。  冬の一日は、長う感じられることもございます。だからこそ、手をあたためる時間をひとつの合図とし、自分自身をやさしく包んでやりたいものでありますな。 18 December Mental Wellness One Thought a Day — A Moment to Warm the Hands —  In winter, upon returning home after errands outdoors, we are sometimes startled by how cold our hands have become. When the fingertips chill, the heart too can feel as though it tightens. It is a sign that our bodies seek warmth and comfort more deeply than we often realise.  At such times, rest your hands near the gentle heat of a stove or the rising steam of a kettle. Or simply wrap your fingers around a warm mug. The spreading ...

歩幅をゆるめる日(2025年12月17日)

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12月17日 メンタルウェルネス 一日一話  冬が深まってまいりますと、人の流れもどこか早うなり、街を歩く足音がせわしなく響くものでございます。気がつきますれば、自分の歩幅までも急いていることがある。そうした折こそ、意識して“ゆっくり歩く”ことを思い出したいものであります。  歩く速度を少し落とすだけで、冬の空気の澄み具合や、店先からこぼれるあたたかい灯りに気づくことができる。肩に入っていた力も、いつの間にかふっと抜け、呼吸も自然と深うなってまいります。  ゆっくり歩くという行いは、自分の心を外側の忙しさから守る、小さな盾のようなものでございます。誰かのペースに合わせる必要はない。自分のリズムを取り戻すための、ささやかな“自分への配慮”なのであります。  冬は、気温ばかりでなく心も冷えやすい季節でございます。だからこそ、ほんの少しだけ歩く速度をゆるめてみる。その時間が、今日の自分をそっとやさしく包みなおしてくれるのでありますな。 17 December Mental Wellness One Thought a Day — A Day for Loosening One’s Pace —  As winter deepens, the flow of people seems to quicken. Footsteps echo briskly along the streets, and before we realise it, our own stride has grown hurried. It is in such moments that we ought to remember the simple act of walking more slowly.  By easing our pace even slightly, we notice the clarity of the winter air and the warm light spilling from shopfronts. The tension held in our shoulders melts away, and our breathing naturally deepens.  To walk slowly is to hold a small ...

やさしさを渡す日(2025年12月16日)

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12月16日 メンタルウェルネス 一日一話  寒さが深まってまいりますと、街の空気もどこか静まり、少し硬さを帯びてくるものでございます。しかしながら、そのような中でも、心がふっとあたたかくなる瞬間がございます。すれ違いざまの小さな会釈、エレベーターでの「どうぞ」というひと言——ほんの些細なふるまいに触れますと、身体の奥がやさしくゆるんでまいります。  そして、受け取ったあたたかさというものは、不思議なことに自分の中で増えてまいります。ゆえに今日は、ひとつ「渡す」ことを意識してみたいものであります。道を譲る、レジで「ありがとう」を少し丁寧に伝える、職場で誰かの作業をそっと手伝う——どんな小さなことであってもよろしい。  自分ができるやさしさを差し出しますと、相手ばかりでなく、自分の心も静かに整ってまいります。それは、「誰かを大切にできた」という、小さな自己肯定感の灯がともるからでありましょう。  冬は冷たさが募る季節でございます。だからこそ、あたたかさは、自分から少しだけ差し出してみる。その一滴が、今日という日をやわらかく変えてくれるのでありますな。 16 December Mental Wellness One Thought a Day — A Day for Offering Kindness —  As winter deepens, the air of the city grows quieter and takes on a certain stiffness. Yet even in such a season, there are moments when the heart warms unexpectedly—a small nod exchanged in passing, a gentle “after you” at the lift. These brief gestures soften something deep within us.  And the warmth we receive has a curious way of growing inside us. So today, let us try to offer just one kindness. Yielding a path, saying “t...

小さな余白の力(2025年12月15日)

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12月15日 メンタルウェルネス 一日一話  年の瀬が近づいてまいりますと、やることが少しずつ増えてまいります。仕事の締め切り、買い物、片づけ、来年の準備——“やるべきこと”が頭の中に並びはじめますと、心は知らぬ間に急ぎ足となるものでございます。  そうした日には、あえてひとつ「余白」をつくってみたいものであります。湯気の立つ飲み物をゆっくりと口に運ぶ数分でもよろしいし、窓の外の景色をぼんやり眺めるひとときでもよい。短い時間であっても、心はその静けさをしっかりと受け取ってくれるのであります。  不思議なことでありますが、余白をつくりますと、かえって物事がうまく回りはじめる。焦りで固まっていた気持ちがほぐれ、今の自分にできるペースが自然と見えてくるのであります。  冬は、心も手も忙しくなる季節でございます。だからこそ、自分のために小さな“間”をひとつ置いてみる。そのわずかな静けさが、一日の流れをやさしく整えてくれるのでありますな。 15 December Mental Wellness One Thought a Day — The Power of a Small Pause —  As the year draws to its close, the list of things to be done quietly grows. Deadlines at work, errands to run, tidying the home, preparing for the year ahead— once these “must-do” tasks line up in the mind, the heart begins to hurry without noticing.  On days like this, create one small pause. A few minutes spent sipping a warm drink, or simply gazing out the window, is enough. Even such a brief moment is faithfully received by the heart as quiet nourishment.  Curiously, when we ma...

やさしさが巡る日(2025年12月14日)

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12月14日 メンタルウェルネス 一日一話  冬になりますと、人の歩く速度もどこかゆっくりとなり、道ですれ違う方々の肩も少し丸う見えて、「みなさん、それぞれに寒さの中で頑張っておられるのだな」と、ふと思うことがございます。  そうした折、ほんの小さなやさしさが、自分の心にも温度を戻してくれるのであります。ドアを開けて待っていてくださる方、電車で席を譲ろうと声をかけてくださった方、買い物帰りに店員さんが向けてくれたひとことの笑顔。いずれも一瞬の出来事ではありますが、心には長く残るものでございます。  不思議なことでございますが、やさしさを受け取りますと、自分もまた誰かにやさしくしたくなる。その循環が、冬の日をほんの少し明るくしてくれるのでありましょう。  もし今日、心がすこし冷えたと感じましたら、やさしさをひとつ受け取ってみる。そして、自分もひとつ返してみる。それだけで、世界の見え方がやわらかくなるのであります。 14 December Mental Wellness One Thought a Day — A Day When Kindness Circulates —  In winter, people seem to walk a little more slowly. Passing strangers often hold their shoulders slightly forward, and one is reminded, “Everyone is doing their best in the cold.”  At such times, even the smallest act of kindness restores warmth to the heart. Someone holding a door open, someone offering a seat on the train, a shop assistant sharing a gentle smile— these moments pass quickly, yet they remain with us for a long while.  Strangely enough, when we receive kindness, we feel ...